「市場分析をしてと言われたけれど、何を調べたらいいのか分からない……」

さらに、「インターネットでとにかく検索してみたけれど、何が重要なのかが分からず、日が暮れてしまった」。こんな経験はありませんか?
あるいは、上司や先輩が仕事をするのを見て「なんて早く頭が回るんだ」と感じたこともあるかもしれません。

もちろん、これらは長年の経験に裏付けられたものや、頭の良さなどの要因もあるかもしれません。しかし実は、考え方の「型」が備わっていれば、誰でもこれらの仕事は、質もスピードも上げることができます。

その型のことを「フレームワーク」と呼び、特にビジネス分野には先達の知恵が結集したさまざまなフレームワークがあります。これらを身に付ければ、目の前の課題を正確にとらえ、問題解決方法を迅速に見つけることができるようになるでしょう。

本稿では、特にマーケティングプロセスで有効なフレームワークを中心に紹介します。

1. フレームワーク思考とは?

まず、「フレームワーク思考」について簡単に説明します。

フレームワークは、「型」や「枠組み」などを意味し、ビジネスにおいては「課題などを解決するための考え方の型/枠組み」のような意味で捉えられます。
例えば、一般的によく聞かれる「5W1H」もその一つです。情報伝達をする際、いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の6つの要素を押さえておけば、もれなくダブりなく情報を伝えることができる、というものです。

初めて直面する問題に対して、抜け漏れなく情報を集めることは大変難しいことです。しかし、このような「押さえておくべき要素、視点」をあらかじめ知っておけば、調べるべきことや考えるべきことが分かるようになり、ぐっと対処しやすくなるはずです。仕事で「先輩の助言が役立った」と感じるのは、こうした視点を得られた時ではないでしょうか。

本稿で紹介する「フレームワーク思考」とは、そのような先人たちが築いたフレームワークを活用して、論理的かつ迅速に問題を解決しようという考え方のことを意味します。

ただし、型という言葉からもわかるように、型にはまらない要素があった場合は見逃してしまう可能性もあります。型によって一定の品質の解答を出しつつも、一方では本質を見つめて考え抜くことを忘れてはいけません。「物事の全体像を捉える助けとして使う」ということを心に留めておくことが大切です。

2. マーケティングに有効なフレームワーク

フレームワークと一言で言っても、分野ごとにさまざまなものがあります。
本稿では、実際のビジネスシーンで行われている状況分析から戦略策定、そして管理・評価までのマーケティングプロセスにおいて有効なフレームワークとして、次の3つの場面で役に立つフレームワークを取り上げ、実践例としてパナソニックを例にいくつかご紹介していきます。

  • 状況分析
  • 戦略構築
  • 管理

それでは一つずつ見ていきましょう。

2-1. 状況分析

事業を新たに興すため、あるいは既存の事業を成功させるために、まず行うべきは「状況分析」です。

まず、状況分析では「内部環境要因」と「外部環境要因」の両面を見ることが大切です。これらを効果的なマーケティング戦略策定が可能になります。内部環境要因としては、自社にどのような経営資源があるのか、またどのような点で競合他社に劣っているのかなどを分析します。一方、外部環境要因としては、「働き方改革」などの社会的要因のような自社ではコントロールできない外部からの影響をもたらしうるものを分析していきます。

しかし、「状況分析をするように」といきなり言われても、何の知識も無ければ、何から手をつけていいかわからず、どうしようと悩んでいるだけで時間が過ぎてしまうでしょう。ここで、状況分析を行う際に有用なフレームワーク「SWOT分析」を知っていれば円滑に状況分析に取り掛かることができ、かつ漏れなく正確な分析が可能になります。

SWOT分析

では、「SWOT分析」とは一体何なのでしょうか?
SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境を分析し、企業の強みや機会をどう生かすか、また、弱みや脅威をどう克服するかというマーケティング戦略策定の意思決定を助けるものです。

SWOT分析は、企業の内部環境と外部環境を構成する以下の4要素の頭文字を取り、名づけられたフレームワークです。

・強み(Strength)
・弱み(Weakness)
・機会(Opportunity)
・脅威(Threat)

ここで、分析する際のポイントとして、漠然と「自社にとってのチャンスとなる外部要因って何だろう」と考えてもなかなか思いつきづらいと思います。そこで、内部環境要因・外部環境要因をそれぞれ考える際にもいくつかのフレームワークを並行して行うことで、よりSWOT分析を容易に行うことが可能になります。

それぞれどんなフレームワークがあるのか、確認していきましょう。

内部環境要因を考える際に有用なフレームワーク

内部環境要因を考える際には、以下の3つのフレームワークが特に役立ちます。

・バリューチェーンモデル
・VRIO分析
・7Sモデル

バリューチェーンモデルでは、自社の生産から販売までのプロセスを分析することで販促プロセスにおける強みと弱み知ることができます。

VRIO分析では、自社の経営資源(ヒト・モノ・資金・情報・組織)を経済価値(Value)希少性(Rarity)模倣困難性(Inimitability)組織(Organization)の4つの指標で評価し、他社に対して競争優位を確立できる経営資源を明確にすることができます。

7Sモデルでは、構造・システム・戦略・スキル・スタッフ・スタイル・共有される価値の7要素から自社の資源や能力を分析します。

外部環境要因を考える際に有用なフレームワーク

組織は内部環境をコントロールすることは可能ですが、外部環境をコントロールすることはできません。それゆえ、戦略立案時には、外部環境を分析し、動向をきちんと理解することが大切です。そこで、分野ごとかつ規模別に外部環境要因を考えるために役立つフレームワークは、として以下の2つを紹介します。

・PEST/分析
・3C分析

PEST分析は、政治(Political)、経済(Economical)、社会(Social)、技術(Technological)の4分野に分け、マクロ規模で社外でどのようなことが起こっているのかを考えていくためのフレームワークです。

例えば、写真投稿アプリのインスタグラムの普及により「インスタ映え」という言葉とともに、おしゃれなカフェやスポットに行き、写真を撮り、SNSに投稿するというのが女子中高生の間でものすごい勢いで流行しました。
このような流行も社会における外部環境要因となります。

反対に、3C分析ではミクロ規模での外部環境要因分析ができます。3Cとは、市場・顧客(Customer)、 競合他社(Competitor)、自社( Company)の3つの視点から、外部環境要因を明らかにしていきます。

例えば市場・顧客では、実際の市場においてどのようなニーズがあるのか、また、どのような顧客がいるのかを考えていきます。さらに発展させたいという人は、販路(Channel)も加えてどのように市場に製品・サービスを売り出していくかなども考えるとより良い営業・マーケティング活動の戦略を立てることができます。

パナソニックのSWOT分析の例

ここまで、状況分析に役立つフレームワークを紹介してきました。これらを踏まえ、パナソニックをSWOT分析した例を見てみましょう。

出典 )「パナソニックのSWOT分析」を基に作成
http://www.darecon.com/swot/index.php?%E3%83%91%E3%83%8A%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF

パナソニックは、自社の強みをブランド力と幅広い事業展開である反面、アフリカ市場などの新市場の出現などの機会を生かすためには、海外におけるブランド力の低さという弱みと中国メーカーの台頭という脅威の克服が必要であると分析できます。

2-2. 戦略構築

状況分析ができたら、次にその製品や事業がどのようにして市場で生き残っていくかという戦略について、STP分析を用いて考えていきます。

STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字をとったもので、自社の製品やサービスが市場でどのような存在として地位を確立していくかを決定する際に用います。

一つずつ見ていきましょう。

セグメンテーション

セグメンテーションとは、不特定多数の顧客をニーズや性質を元に類似した人たちでグループ化していくことです。正確なセグメンテーションを行うことは、顧客のニーズや性質が多様化する現代において非常に重要なステップです。そして、グループ分けができた後に、自社の製品やサービスがどのセグメントのニーズを最も満たすことができるのかを考え、セグメントを決定します。

ターゲティング

セグメンテーションで、自社が展開を狙うセグメントが決定したところで、ターゲティングでよりターゲットを細分化していきます。このターゲティングの段階でいかに詳細かつ的確なターゲットの選定ができるかが、マーケティング戦略の精度に大きく影響していきます。

優れたターゲット選定を行うために使うべきフレームワークは、ペルソナ分析です。ペルソナとは、「架空の人物像」という意味で、ここでは自社の製品やサービスを売り出していく「架空のお客様」というような意味になります。

例えば、スープ専門店Soup Stock Tokyoでは、「秋野つゆ」という37歳、都内在住のOLという基本的なプロフィールから、「社交的な性格」「装飾より機能を好む」といった細かな性格まで設定し、的確なマーケティング戦略を構築できたことで、10年で売上高42億円、店舗数52店舗という大成功を収めることができました。このことからもペルソナ分析の重要性がよくわかります。

ペルソナ分析では、年齢や性別、家族構成などの基本的なプロフィールからその人が抱える悩みや人生目標、購買に優先するであろう項目などの細かなところまで考えていきます。ここで大切なのが、ペルソナの行動ではなく、その行動をとる理由や動機に着目することです。すべての行動にはそれを行う理由や動機があるため、そこをしっかりと考えていくことでより人間味のあるペルソナの設定が可能になります。

ポジショニング

ターゲット決定後、そのターゲットのニーズを満たすために、市場においてどのような立ち位置でマーケティングを行っていくかを決めるポジショニングを行っていきます。費用を極力抑えたいという顧客であるならば、質よりコストを抑えたコストリーダーシップを意識したポジションになるのに対し、質を重視してブランド物がほしいという顧客であるならばコストは比較的軽視してでも質の良いものを提供していくというポジション取りを行っていく必要が出てきます。

パナソニックのSTP分析の例

戦略構築のフレームワークについてみてきました。ここで、パナソニックの電動歯ブラシ「ポケットドルツ」のケースを使ってSTP分析をしてみましょう。

パナソニックは従来、男性や高齢者などをターゲットと設定していましたが、市場の飽和から新ターゲットの設定が必要であると考えました。そこで、ランチ後に歯磨きをする女性社員に注目し、ターゲットを20、30代の職場で歯磨きをする女性と設定しました。

次に、なぜこのセグメントの人々は電動歯ブラシを使わず手磨きをしているのかを考えます。そこには「大きすぎて持ち運びに不便」、「おじさん臭い」という理由があると考え、コンセプトを「マスカラのような、電動歯ブラシ」として新たに開発を進めたところ、見事ターゲットである若手女性に受け、成功しました。

参考)
「ポケットドルツ」の成功を決定づけたインサイトとは何か (2018年6月13日掲載、ダイヤモンド・オンライン)
https://diamond.jp/articles/-/171853

2-3. 管理

状況分析、戦略構築を終え、市場に製品やサービスが出回り、複数の事業を展開するようになったら、それらの事業をしっかりと管理していくことが重要になってきます。そこでPPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)というフレームワークは、自社の事業展開が複数以上になった際に、どの事業に継続して投資していくか、あるいはどの事業に対する投資を打ち切るかなどの経営資源の投資先を経営者が意思決定する際に役立ちます。

PPMでは、自社の事業を市場の成長性と相対的マーケットシェアを基に、以下の4つのグループに分けて考えます。

右上に位置する「花形」事業は、収益性と成長性の両方が高いため今後も継続的に投資していくことが望ましい非常に優秀な事業です。一方、左下にある「負け犬」事業は、既に競合他社によりマーケットシェアを独占されており、また市場自体も飽和状態で成長性が低いことから早めの撤退が必要です。
また、左上に位置する「問題児」は、収益性は低いが成長性は高いため大規模な投資を図ることで成功しマーケットシェアが上がれば、花形事業へ持っていくことも可能なため、期待値の高い事業と言えます。
「金のなる木」は、収益性が高く、キャッシュを生み出す力がある反面、市場自体は既に成熟してしまっており、今後も継続して収益が見込めるわけではないため、投資を検討する必要があります。
もちろん、この分析結果に加えて、膨大な初期投資や従業員の雇用等の市場撤退障壁もきちんと考慮する必要があります。

このように各事業を成長性、相対的マーケットシェアをもとに区分し、どの事業が継続して投資する価値のある事業なのか、また早急に撤退する必要のある事業なのかを見極めることで、効率的な経営資源の運用ができるようになります。

PPMモデルの例

パナソニックのPPMモデル
2010年におけるパナソニックのPPMモデルはこのようになっていました。

出典)沼上他(2012)『戦略分析ケースブック』東洋経済新報社p.162-163をもとに作成

パナソニックは2013年、負け犬事業に分類される携帯電話事業からの撤退を発表しました。ガラパゴス携帯事業においては好調でしたが、Appleなどの台頭によりスマートフォンブームが起こり、パナソニックの携帯事業における業績は衰退していきました。

その衰退の原因としては、スマートフォン市場にはいち早く参入したものの、その後のブランディングにおいて十分なSTPができておらず、市場のニーズとは異なる機能をもったスマートフォンを開発してしまい、携帯電話事業は赤字となり、撤退を余儀なくされてしまいました。

そしてパナソニックは負け犬事業である携帯電話事業から撤退し、他の事業への投資に経営資源をまわすことを決定しました。

参考)
悲運のパナソニックスマホ!苦戦の歴史と撤退となれば残念すぎる理由
http://news.livedoor.com/article/detail/8020860/
PPM理論で学ぶ! パナソニック携帯事業の撤退理由
https://bizplan.media/?p=119
パナソニックが携帯事業を縮小へ、減損処理も=関係筋
https://jp.reuters.com/article/tk0538673-panasonic-europe-idJPTYE89P02120121026

3. まとめ

フレームワーク思考は、課題を解決するための型・枠組み(フレームワーク)を用いて、論理的かつ効率的に問題解決にあたろうとする考え方のことです。

働き方改革などにより残業時間を制限することが求められる現代において、企業の収益を落とすことなく、社員の残業時間を減らすためには、同じ仕事量を効率的にこなしてもらい、理想としては勤務時間内にすべての業務を終わらせられるようになることが求められます。そのためには、フレームワーク思考法を社員に教育し、実践していく必要があります。

あなたの企業では、残業時間を減らすためにどのような対策を行っていますか?
残業を減らして、経営者、社員の双方がwin-winの関係で結ばれた会社にするために、ぜひこの記事でご紹介した論理思考法を取り入れてみてください。