「労働生産性」を正しく理解しよう!

「労働生産性」は、現在の安倍政権が推進する『働き方改革』の柱の一つに取り上げられています。背景には、少子化による労働人口の減少や売り手市場による労働力不足などの影響を受けて、外国人人材や女性の活躍推進などの労働人口の拡大だけでなく、1人あたりの労働生産性を向上させて労働力不足の解消を目指していこうとする考え方があります。

ロボットや人工知能などによる業務効率化の動きの影響もあり、現在の日本は過去最高を更新しています。しかしながら、国際社会で見ると「日本は先進国(G7)の中で最下位水準である」などとあまり高くないことが議論にあがっています。

外国人人材や女性の活躍推進といった多種多様な人材が労働する一方で、市場のグローバル化やロボットやITの利活用、人工知能による業務内容の変化を考えると、人材を有効活用しながら業務を効率化する「労働生産性」の向上は大きな課題です。

今回は労働生産性に関する基礎知識と、日本の労働生産性の特徴について説明いたします。

労働生産性の意味や定義とは

労働生産性の意味を考える前に「労働」と「生産性」のそれぞれの意味について考察します。

労働とは「賃金・報酬を得るために、体力や知力を使って働くこと」と定義されています。生産性とは「投入資源と産出の比率」を意味しています。

労働生産性とは「投入資源(労働力、労働量)に対して、どの程度の産出(労働の成果)が得られたのか」を意味しています。1人の労働者が1年間で500万円を生み出したことと、1,000万円を生み出したことを比較すると、後者の1,000万円の方が労働生産性が高いと判断できることは想像しやすいかと思います。

労働生産性とは、言い換えれば「労働者1人あたりが生み出す成果」あるいは「労働者が1時間で生み出す成果」の指標です。

労働生産性とは
出典元『BOWGL』労働生産性とは?混同しがちな定義と計算式をわかりやすく解説

労働生産性を向上させるには「労働者1人あたり(労働1時間あたり)の成果を増やす」「同じ成果を得るために労働者の数(労働時間)を減らす」ことが必要です。労働生産性が低下するのは、成果が減る・労働者の数が増えるなどによって引き起こります。

労働投入量として「労働者1人あたり」か「労働時間1時間あたり」のどちらが用いられるかについては注意が必要です。アルバイトやパートなどの短時間労働者と正規社員などのフルタイム労働者では労働者1人あたりの労働時間が異なります。また非正規社員と正規社員を比べた場合には、同じ1時間に生み出す成果にも差が生まれます。どちらか一方だけを見れば良いわけではなく、場合によっては両方の労働生産性を確認する必要があります。

なお労働生産性には、物的労働生産性と付加価値労働生産性の2つの種類があります。

  • 物的労働生産性:「産出」の対象を「生産量」「販売金額」として置いたもの
  • 付加価値労働生産性:「産出」の対象を「付加価値額」として置いたもの

「物的労働生産性」とは

物的労働生産性とは、労働の成果である「産出」の対象を「生産量」「販売金額」としておいたものです。

「生産量」は「市場の動向により商品価格が変化する」場合に有効です。例えば農家が作る野菜などは、季節や天候などによって販売価格が変動しやすいため、「1,000万円分の野菜を作った」よりも「キャベツを何個作った、レタスを何個作った」などの指標の方が市場価格の動向に左右されない比較が可能になります。

「販売価格」は「市場の動向によって商品価格が変化しない」場合に有効です。メーカーなどでは「販売希望価格」などが設けられているため、販売希望価格と製造個数の乗算によって産出を容易に計算することが可能です。

物的労働生産性は、ある生産現場(一定の広さの畑や工場)が生産効率を上げることで、従来よりも多くの産出が得られたかを比較する場合に用いられます。

付加価値労働生産性とは

付加価値労働性とは、労働の成果である「産出」の対象を「付加価値額」としておいたものです。

「付加価値額」の算出方法はさまざまありますが、粗利益に近い概念であると認識して頂ければ十分です。企業が新しく生み出した金額(付加価値)として、原材料費や外注加工費などを除いた金額を意味します。

例えば自動車メーカーは、鉄やアルミなどの原材料から自社の知識を駆使して自動車を組み上げます。自動車の企画や研究開発費、加工や組み立てにかかる人件費などをすべてひっくるめて、原材料から自動車を生み出したことが付加価値として判断できます。

「付加価値労働性」は、ITサービスやコンサルティング、弁護士など「物ではなく知識による付加価値」を提供する場合にも有効に用いられます。どれぐらいの付加価値(粗利益)が得られたのかは、営利組織であれば算出できるため、様々な業界や業種を比較する上でも有効な労働生産性と言えます。

日本の労働生産性の現状について

日本の労働生産性は低いと、様々なところで言われています。まずは日本国内における労働生産性の推移を確認してみましょう。

日本の労働生産性の推移
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』日本の労働生産性の推移

日本における労働生産性は、2009年のリーマン・ショック時に低下したものの、緩やかに上昇しています。2016年時点では、労働者1人あたりでも、就業1時間あたりでも過去最高の労働生産性となっています。1986年から91年のバブル景気の時期以上に生産性が高まっています。

1955年から1995年にかけて労働生産性が大きく向上した一方で、1995年から2015年までの間には労働生産性の向上に歯止めがかかっています。原因としては、バブル崩壊による「失われた10年」での経済低迷やデフレによる消費支出の抑制、Windowsなどパソコンの普及で消費者ニーズの多様化など、様々な原因が考えられます。

国際視点から見る日本の労働生産性について

OECD加盟国中の日本の時間あたり労働生産性(就業 1 時間当たり付加価値)は46.0 ドルで、35カ国中20位で、米国の 3 分の 2 の水準となっています。データが取得可能な 1970 年以降、最下位の状況が続いています。

時間あたりの労働生産性
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

就業者1人当たりでみた2016年の日本の労働生産性は、81,777ドル(834万円/購買力平価(PPP)換算)。順位は、OECD加盟35カ国中21位となっています。就業1時間当たりと同様、就業者1人当たりでみても、主要先進7カ国(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)で最も低い水準となっています。

労働者1人あたりの労働生産性
出典元『公共財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較 2017 年版

日本の水準は、英国(88,427ドル)や、カナダ(88,359ドル)をやや下回る位置です。米国と比較すると、1990年には3/4近い水準ですが、2010年代以降は3分の2程度で推移しています。

参考までに、 第1位はアイルランド(168,724ドル/1,722万円)、第2位はルクセンブルク(144,273ドル/1,472万円)で、時間当たりと同様、両国の生産性水準がOECD加盟国の中でも突出しており、その労働生産性の高さに大きな優位性があるのは明らかです。

両国が突出して高い理由としては、外資企業が進出しやすい環境を構築したことが挙げられます。アイルランドでは専門分野の人材育成や事業に関する規制緩和を推進しており、ルクセンブルクでは産出額が大きい金融業に注力したことなどの様々な理由が挙げられています。国内系企業の活躍を推進したい日本としては、アイルランドやルクセンブルクの事例をそのまま参考にできない点もありますが、アメリカやスイスなどの事例は参考にできる点も多いでしょう。

まずは日本の労働生産性の現状を知ろう!

日本の労働生産性は、30~40年前と比較すると大きな向上が見える一方で、リーマン・ショックなどの影響で2000年代後半(2005~2009年平均)に0.5%を下回る水準に。2010年代前半(2010~2014年平均)はやや持ち直したものの、近年、2015年以降は多少の増加はしつつ、横ばい傾向にあります。

他先進国と比較した場合も、水準としては低くはありませんが、比較した際の数値から、日本特有のさまざまな問題も読みとることができます。

「労働生産性」をいかに向上させていくか。今まで以上に新しいビジネスモデルの創出や高度人材の育成、ITの活用などが求められています。

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