皆さまは労働基準監督官と聞くとどのような印象がありますでしょうか?

総務・人事のご担当者さまには、あまり会いたくない…と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
今回はそんな監督官について、意外と知られていない情報をお伝えしていきたいと思います。

労働基準監督官の業務

監督官の主な業務は、事業場に訪問のうえ法令違反がないか確認を行う臨検、労働災害発生時の調査、司法処分の3つとなります。

臨検監督

まず真っ先に思い浮かぶのは、この臨検ではないでしょうか。
事前の予告なく事業所にやってきて、労働関係に法違反がないか調査が行われます。

関係帳簿の確認⇒ヒアリング⇒立ち入り調査⇒改善指導という流れが一般的なようです。
調査予告をしないほうが、現状そのままを調べられますが、実際には事前に予告をされて必要帳簿などを準備させるケースもあります。

最終的に調査の結果、是正勧告書や使用停止命令書が出されることとなります。

労働災害発生時の調査

工場や工事現場で多いケースですが、労働災害が発生した場合にその原因等を調査するのも監督官の役割です。

現場の計測、写真撮影など調査を行い、それらを監督署で審議・検討します。
そして後日、再発防止などにかかる指導を行うのですが、悪質と判断された場合には、司法処分が下されるケースもあります。

司法処分

監督官には、刑事訴訟法に基づく司法警察員として送検をする権限があります。
賃金不払いなど労働基準法違反、死亡災害など労働安全衛生法違反に対して、取り調べや強制捜索を行い、検察庁に書類送検が行われます。

労働基準監督官の不足という問題

労働関係の違反に対する警察官ともいえる監督官ですが、絶対的に数が足りていないのが実情です。

監督官の数は、ILO(国際労働機関)によって基準が示されていますが、「労働監督官1人当たり最大労働者数1万人とすべき」とされています。

ところが、総務省統計局によると、平成30年6月時点で雇用者数は5,953万人。
対して監督官の数は平成28年度で3,241名となっていて、雇用者1万人あたりの監督官は0.62人となっています。

なお、内閣府の規制改革推進会議が、平成29年5月にまとめた資料「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース取りまとめ」によれば、平成26年時点で総事業場数は412万超。
これらの数字を見てみると、圧倒的に人手が足りていないことがおわかりいただけるかと思います。

さらに、平成28年4月~平成29年3月までに長時間労働が疑われる23,915の事業場に監督指導を行っています。
そのうち違反が認められたのは66.0%と非常に高い数値を示しています。

監督指導の実施数が増えれば、より重大な違反が発見される可能性が高く、労働者を守るためには監督官の確保が喫緊の課題となっています。
ただし財源の確保が難しいこともあり、簡単に人を増やすことはできません。

必要な監督指導の実施時間確保のために

こういった状況を改善すべく、各都道府県労働局では2018年7月より民間に労働基準監督署業務の一部を委託し、重大な違反がある事業場への監督指導の時間確保を行っております。
主な委託業務としては、36協定未届事業場への自主点検票の送付・取りまとめ、相談・指導の実施となりますが、その後都道府県労働局へ報告を行い、労働基準監督官は必要に応じて問題があった事業場に監督指導を実施します。

もしかするとお手元に点検票が届いている事業場もあるかもしれませんね。

民間委託はほぼ一斉で、2019年3月までが委託期間となっているようですが、
今後継続して行われていくことが想定されています。
これまで、労働基準監督署の臨検がなくて安心していた事業場にも、監督官がやってくる可能性が十分にあります。
是正勧告や使用停止命令に従わない場合、業務の停止や社名の公表が行われる可能性があり、最悪のケースでは書類送検というおそれもあります。

そうならないためにも、いま一度、労働関係法規に違反していないか確認を行い、法令順守を徹底していく必要があるといえるでしょう。

<参考>
・ 「労働力調査」(総務省統計局)
・ 「労働基準監督行政について(PDF)」(厚生労働省労働基準局)
・ 「平成28年4月から平成29年3月までに実施した監督指導結果」(厚生労働省)
・ 「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース取りまとめ」(規制改革推進会議 労働基準監督業務の民間活用タスクフォース)