日本“ならでは”の「同一労働同一賃金」を実現する

同一労働同一賃金制度は、同一の労働に従事する労働者には同一の賃金を支給するというもので、ドイツやフランスなどのEU諸国に普及している考え方です。ヨーロッパ諸国で浸透している「同一労働同一賃金」の考え方をベースとして、日本の働き方改革の施策の一つとして「同一労働同一賃金」の法案の政策が進んでいます。

EU諸国や欧米で「同一労働同一賃金」が普及した背景には、移民なども含めた「多人種国家」において人種によって賃金が変わる差別的要素を排除する目的があったこと、こなす仕事(職務)が明確であるため職務をこなした人材に対する報酬は一律で決められることが挙げられます。

経団連などは日本で広く人事評価制度を取り上げ、「総合職(ジェネラリスト)から様々な業務を経験させる、終身雇用など過去の会社への貢献度が評価に反映されている」などの理由から、ヨーロッパ諸国で浸透している「同一労働同一賃金」をそのまま日本に反映させるのは難しい(企業における実態が追いつかない)ことを指摘しています。

現在日本で議論されている「同一労働同一賃金」は、日本企業の実態を反映しながら「同一労働同一賃金」を実現させる、日本独特の制度としての内容となっています。

同一労働同一賃金制度の反映は、大企業では2020年4月から、その他中小企業などでは(対応の猶予期間も含めて)2021年4月からとなります。どのような内容にしようとしているのか「ガイドライン案」が公開されています。今回は「同一労働同一労働のガイドライン案」に沿って、日本ならではの同一労働同一賃金制度とはどんな内容になりそうなのかを説明します。

参考URL『厚生労働省』同一労働同一賃金ガイドライン案 平成28年12月20日

「同一労働同一賃金」ガイドライン案の目的や概要について

何故ガイドライン案が作成されたのか?(目的)

ヨーロッパ諸国での働き方と日本での働き方が違うため、ヨーロッパでの「同一労働同一賃金」制度をそのまま日本で適用させようとすると、各企業で大混乱が起こったり、そもそも守られなかったりする可能性があります。

そのため、正規・非正規の格差を埋める「同一労働同一賃金」の目的は維持しながら、終身雇用や総合職採用など、日本の働き方や評価制度に準じた法整備が求められています。

各企業にとって無理のない(混乱を起こさず運用できる)ために、どのような法改正を行うべきなのか、企業の実態と政府の理想の落とし所を決めるために作られたのが「同一労働同一賃金のガイドライン案」です。ガイドライン案は2016年12月20日に、安倍総理が議長を務める「働き方改革実現会議」において政府案として提示されました。

同一労働同一賃金のガイドライン案を基にして、関連法案の改正が行われることが予想されます。ガイドライン案の全てが、必ず法改正に反映されるわけではありませんが、法改正の大まかな方向性自体は、ガイドライン案に記載されています。

法改正実施前の2018年現在でも、どのような法改正が行われようとしているのか、事前に把握し、企業側で対応しなければならないことも読み解くことができます。ガイドライン案では、具体的な状況を踏まえて、「Aのケースは問題ないが、Bのケースは問題がある」など、ビジネスシーンで起こりうる状況を基に説明がされています。そのため、法律の専門家でなくても、人事担当者であれば読みやすくイメージのわきやすい内容となっています。

同一労働同一賃金の適用時期とはいつから?

ガイドラインは、2016年12月に「同一労働同一賃金ガイドライン案」として、「働き方改革実現会議」に提示されました。2017年9月に、労働政策審議会から法律案要綱の答申を実施し、これを踏まえて法律案が作成され、2018年4月に国会へ提出されています。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年7月6日に公布され、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正が行われます。大企業では2020年4月から、中小企業では(準備などの猶予期間を含めて)2021年4月からの反映となります。

賃金などの評価制度の見直しをはじめとして、就業規則の改定、労働組合との調整など準備すべきことは多いです。公布から企業への施行まで約1年と半年の猶予がありますが、時間的な余裕はあまりないのが現状です。

同一労働同一賃金をめぐる動向

  • 2016年6月 「ニッポン1億総活躍プラン」閣議決定
  • 2016年9月 政府「働き方改革実現会議」発足
  • 2016年12月 働き方改革実現会議「 同一労働同一賃金ガイドライン(案)」提示
  • 2017年3月 働き方改革実現会議「 働き方改革実行計画」取りまとめ
  • 2017年6月 厚生労働省 労働政策審議会「 同一労働同一賃金に関する法整備について」取りまとめ
  • 2018年上半期 労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法等改正案 通常国会で審議?
  • 2019年~2020年? 改正法施行?

引用元『PASONA WEBマガジン INITIATIVE』「同一労働同一賃金」法改正のポイントと企業が準備すべきこととは

ガイドライン案の内容について

現状の日本の労働環境では、基本給などの賃金は、時間外手当やボーナスなど、さまざまな要素を組み合わせて決定されているケースが主流です。その中で「同一労働同一賃金」を実現するために、ガイドライン案では、各企業において以下のような取り組みが必要になるとまとめています。

正規社員、非正規社員それぞれの賃金決定の基準やルールを明確にし、「職務と能力など」と「待遇」との関係を含む処遇体系を労使で話し合い、非正規社員を含めて労使間で共有する

それぞれの企業が、自社の職務内容や社員一人ひとりの能力・スキルなどを明確にして、処遇体系全体に関して労使間で確認し、非正規雇用労働者を含む、全社員の処遇に関する基準を共有することが求められます。

賃金決定の基準やルールの違いなどがある場合には、客観的かつ公平な理由などを明らかにしておくことが必要です。

賃金以外の、福利厚生や能力開発などの処遇の均等を図り、生産性の向上を目指す

合理的でない待遇の格差は賃金だけではありません。有給や交通費、社内食堂などのファシリティーといった福利厚生、キャリア形成・能力開発などのスキルアップの機会において、格差がある項目は多岐にわたります。福利厚生は、たとえば子育てサポートや資格の取得支援、サークル活動の支援、有給休暇制度や財産形成貯蓄なども含まれます。

能力開発に関しては、非正規の社員にも機会を与えることで、個人のスキルアップ、生産性が向上することで、結果、弾力のある組織にもつながります。

派遣労働者に対する均等・均衡処遇

派遣労働者が、派遣先の労働者と比較して職務内容、職内容や配置の変更範囲、また、その他の事情が同じ場合、派遣元事業者は均等・均衡な待遇を図る必要があります。具体的には、派遣先の労働者と同じ賃金を支給し、福利厚生施設の利用や教育訓練の機会を与える必要があります。

均等・均衡待遇を図る上での待遇差について、社員サイドの納得度の高さが重要なポイントです。今回のガイドラインでは「労働者の納得」についても触れており、雇用形態に関わらず均等の処遇が確保され、誰もが自由にワークスタイルを選ぶことができる就労環境を目指すとしています。

ガイドライン案の4つの項目

同一労働同一労働のガイドライン案は、大きく分けて4つの項目に分かれています。今回は各項目の概要についてお伝えします。

1.基本給

基本給の決定基準となる要素を4つに分けています。

  • 職業経験・能力に応じて支給する場合
  • 業績や成果に応じて支給する場合
  • 勤続年数に応じて支給する場合
  • 昇級について、勤続による職業能力の向上に応じて行おうとする場合

2.賞与・手当

  • 賞与・役職手当
  • その他の手当

ガイドライン案では以下の手当について、非正規雇用労働者が客観的にみて手当の支給要件を満たしている場合は正規雇用労働者との均等処遇を図り、同一の手当を支給するよう求めています。

  • 特殊作業手当
  • 特殊勤務手当
  • 精皆勤手当
  • 時間外労働手当(割増率等)
  • 休日手当、深夜手当(割増率等)
  • 通勤手当、出張旅費
  • 食事手当(勤務時間内に食事時間がはさまれている場合)
  • 単身赴任手当
  • 地域手当

3.福利厚生

  • 福利厚生施設(食堂や休憩室、更衣室)の利用
  • 転勤者用社宅の利用
  • 慶弔休暇の付与、健康診断に伴う勤務の免除や有給保障
  • 病気休職の付与
  • 法定外の年休・休暇(慶事休暇を除く)の付与(勤続期間に応じた付与)

4.その他

  • 教育訓練
  • 安全管理に関する措置・給付

ガイドライン案の趣旨と目的を理解しよう

EU諸国などで普及している「同一労働同一賃金」制度は、日本とは働き方が違うため、日本ならではの「同一労働同一賃金」制度を作る必要が生まれました。関連法案の整備のため、指針を示したものが「同一労働同一賃金ガイドライン案」です。

ガイドライン案はあくまで指針でしかなく、必ずこの通りに法改正されるわけではありません。しかしガイドラインの趣旨と目的などは変わらないため、引き続き、議論の行方を確認していくことが必要です。

日本ならではの「同一労働同一賃金」が何を目指そうとしているのか、企業として具体的に何をしなければならないのかについては、日本ならではの「同一労働同一賃金」を実現しようとする目的である「正規・非正規間の格差是正」の観点から、振り返ってみてはいかがでしょうか?

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