同一労働同一賃金の導入にむけて

先日、ワールドカップに日本全国が沸く中、国会で働き方改革法案が成立しました。
今回はその中の「同一労働同一賃金の導入」について詳しくとりあげたいと思います。

同一労働同一賃金の導入は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

引用元:同一同労同一賃金ガイドライン案の概要(厚生労働省)

前回の記事の「長澤運輸事件」でもとりあげたように、すでに労働契約法20条で「不合理な格差」は禁止されています。しかし、どこからどこまでが不合理とされるのかという判断基準が不明確な為、今回の法案成立・導入に向けて具体的に定め、その指針として厚生労働省が提示したものが「同一労働同一賃金ガイドライン案」です。

ガイドライン案の概要

ガイドライン案の概要

注意すべき点は、基本給や各種手当について差がある場合、その「違い」の理由を「正社員と契約社員・パートタイム労働者は将来の役割期待が異なる為、賃金の決定基準・ルールが異なる」としがちですが、それだけでは主観的・抽象的であり、理由として足りないとされていることです。
職務内容や配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態を元とした明確な理由が必要となります。
ガイドライン案には具体的に「問題とならない例」「問題となる例」が挙げられています。例えば基本給に関する事例は以下のとおりです。

<問題とならない例①>
・基本給について労働者の職業経験・能力に応じて支給しているA社において、ある職業能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。無期雇用フルタイム労働者であるXは、このキャリアコースを選択し、その結果としてその職業能力を習得した。これに対し、パートタイム労働者であるYは、その職業能力を習得していない。A社は、その職業能力に応じた支給をXには行い、Yには行っていない。

<問題とならない例②>
・B社においては、定期的に職務内容や勤務地変更がある無期雇用フルタイム労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務内容と配置に変更のないパートタイム労働者であるYのアドバイスを受けながらYと同様の定型的な仕事に従事している。B社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における職業経験・能力に応じることなく、Yに比べ高額の基本給を支給している。

引用元:同一労働同一賃金ガイドライン案(厚生労働省)

まだまだ不明確な点もある

しかし、ガイドライン案の事例では補いきれない点もまだまだあると思います。
例えば、「賞与」においては「同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める」とありますが、前回の記事の「長澤運輸事件」では業務内容が正社員時と変わらないのにも関わらず、定年後再雇用の契約社員となったことで賞与はなしとなっています。
最高裁の判決でも、定年後再雇用における賃下げは社会的に広く行われることであるという点から、この違いは不合理ではないと判断されています。
実際の導入にむけて、より多く具体的な事例に基づいた検討が必要になりそうです。

働き方改革推進センターを活用しよう

「じゃあいったい何からすればいいの?」と思われた方は、ぜひ各都道府県に設置されている働き方改革推進センターを活用しましょう。
社会保険労務士などの専門家が電話や対面で無料相談を行っています。同一労働同一賃金に関すること以外でも、以下のような働き方改革に関することであれば相談が可能です。

・ 36協定について詳しく知りたい
・ 非正規の方の待遇をよくしたい
・ 賃金引上げに活用できる国の支援制度を知りたい
・ 人手不足に対応するため、どのようにしたらよいか教えてほしい
・ 助成金を利用したいが利用できる助成金が分からない

また、ガイドライン案について質問がある際は、厚生労働省が設置した下記に問合せが可能です。
「同一労働同一賃金に関する専用相談窓口(※平日9:30~18:15受付)」
TEL:03-3595-3316

今回ご紹介したガイドライン案はあくまで案であり、今後2020年4月(中小企業は2021年4月)の導入に向けて検討・審議の上で確定する予定です。動向に注目していきましょう。

<参考>
・ 同一労働同一賃金ガイドライン案(厚生労働省)
・ 同一労働同一賃金特集ページ(厚生労働省)

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