Y世代に真正面から向き合おう

ご存じの方も多いと思うが、Y世代(ジェネレーションY)とはX世代(※1)に続く世代でありさまざまな見方はあるものの、日本ではおおむね1980年代初頭から1995年前後に生まれた世代を指す。ポスト団塊ジュニアとほぼ同意である。ビジネスの現場においては20歳から30歳代前半のいわゆる「若手」がそれに当たる。日本におけるY世代のボリュームゾーンはバブル崩壊後の「失われた20年」に多感な青少年期を過ごし、不況や失業、将来にわたっての不透明さを間接的に体感していることが特徴的だ。伝統的な大企業が人員削減を迫られる中、親がリストラに遭ってしまったことも珍しくなく、世の理不尽さを目の当たりに育ってきた世代ともいえよう。 大半はデジタルネィティブであり、彼らにとっては公衆電話もポケベルも敢えて大げさに表現すれば歴史の一ページにすぎない。筆者も社会学専攻の大学院生に「携帯電話の無かった頃のコミュニケーション手法」について大真面目にインタビューをされたことがあったが、要するにそういう世代なのである。 これは筆者の個人的な感想なので、当のY世代の皆さんも含め異論もあろうが、このY世代、一言で表現すれば質問の世代(Why世代)である。「Why」が先でその後に「What」がくる。「How」はまず話題にはならない。ある意味ではコンサル的でありサラリーマン的ではない。一方、「Hot Dog Press」(※2)と共に青春時代を歩んだバブル世代などはHowで塗り固められた世代であり、そもそも根っこの部分が違う。 なぜ仕事をするのか。Y世代からこう問いかけられたとする。答えられるだろうか。小職自身もこの直球を何度も受けた。もちろん彼らも面接用、上司用の模範解答は用意してある。用意はしてあるが、常に自問自答している。将来にわたって仕事をするということにどんな意味があるのか。前途に霧のかかった時代に青春を過ごした若者らしい問いであろう。 図表1を見てほしい。ここにある「興味のある仕事」は個人的に面白いということにとどまらないと考える。そんなに軽くない。「なぜ自分はこの仕事に興味を持ったのか」という問いの背後に「本当にインパクトがあるか」「本質的な価値があるか」などの意味が内包されている。さまざまな環境に身を置くY世代と会話を重ねるとつくづくそう感じられてならない。そして、「社会的に」との枕ことばがつくことも珍しくない。また、ヘイグループの別の調査結果では、「就職先を選択するうえで重視する要素は」との問いに「楽しさ・社会交流」がトップ(※3)となっていることも見逃せない。社会とつながり、自らを高め充実したいとの意向が色濃いのである。ハーバード・ビジネス・スクールを卒業しても高給なコンサルティングファームや投資銀行には目もくれず、社会との直接的なつながりを重んじNGOに職を求める。今はまさにそういう時代なのだろう。 「なぜ顧客志向でなければならないのか」「なぜこの会議に出席しなければならないのか」こうしたWhyの連続を単なるY世代=今ドキの若者の特徴と片付けてしまってはならない。「なぜ」は価値創造の1丁目1番地であり、なぜと問いつづけ、意識して横につながり、そして無意識に本質的な価値に肉薄することはビジネスクリエイションの根幹に他ならないからだ。そう考えると、このY世代こそが企業経営のドライビングフォースになり得るのではないか。Y世代こそ“Ace in the hole(とっておきの切り札)”であろう。やや褒めすぎの感があるが筆者はそう考えている。 翻って、日本の企業経営の現場はどうか。図表2は立命館大学経営大学院山本客員教授の講演資料からの抜粋だが、Y世代の有する価値観や身にまとう空気感そのものがこれからの企業経営のあり方(=2010年以降の「顧客価値の再創造」)とシンクロしてはいないだろうか。 企業経営そのものがHow志向(拡大・成長、止血と危機対応、選択と集中)からWhy・What志向(創造)へと大きく変わっている。山本氏はそう指摘する。自立した個人の調和が価値創造を可能とし、その際のビークルはフラット&スピードを旨とする文鎮型組織であり、そこで繰り広げられる「ワイガヤ」こそ、創造思考をさらに加速させる。 新年度のスタートにあたり、現場の「昭和」マネジメント層に心がけていただきたいことがある。それは、月並みな言い方にはなるが自らの価値観を若手に押し付けないことである。権限と責任が明確な「ピラミッド組織」や役割期待を旨とした「プロセス組織」はY世代にとって、あるいは経営現場の最先端ではもはや歴史の一ページにすぎない。直近のワンマン型も含めて対岸へと追いやりY世代に寄り添ってみてはどうだろう。 自らの興味を創造へとつなげ、本質的な価値を追い求めることで差別化を可能とする。War for Talentsの時代、こうしたY世代の姿勢を正しく理解し、彼らに真正面から向き合い、彼らの異能を引き出すことが持続的な企業成長につながる。そう思えてならない。 (※1)第二次世界大戦後のベビーブーム後に生まれた世代。概ね1960年代から1980年代初頭までに生まれた世代を指す。個人主義志向が強くミー・ジェネレーションともいわれる。カナダの小説家Douglas Couplandの「ジェネレーションX -加速された文化のための物語たち」がその語源 (※2)デートマニュアルとして一世を風靡した男性誌。1979年に講談社が創刊。2004年にいったん休刊するも最近ではBSでテレビ番組として復刻するなど、特定の層には今もなお絶大な支持を得ている (※3)楽しさ・社会交流が52%でトップ。賃金・福利厚生が39%、以下会社の知名度、就業形態、能力開発プログラムの充実と続く

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