ナレッジマネジメントとは 働き方改革にも役立つ知識の共有手法を紹介

ナレッジマネジメントとは、個人が持つ知識や経験を組織全体で共有し、活用することで企業の競争力を高め、業績向上を目指す経営手法です。

働き方改革では、残業規制やフレックスタイム制などにより、長時間労働の是正と、多様で柔軟な勤務ができる環境整備が推進されています。企業としては、従業員の労働時間が少なくなる分、今までより生産性を向上させていかなければなりません。その方法のひとつとして、優秀な従業員やベテランの知識を企業内で共有・活用し、業務効率化を図ることが考えられます。

しかし現状は、
「転職者が多く従業員の入れ替わりが激しい」
「テレワークやフレックスタイム制を利用する従業員がおり、従来のようなOJTが難しい」
ということも多く、スムーズな情報の継承や共有が難しい場合も多くなっています。そこで今、改めてナレッジマネジメントの方法が見直されているのです。

本稿では、ナレッジマネジメントとは何か、ナレッジマネジメントを成功させるポイントや企業の事例などを紹介します。

1. ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、個人が持つ知識や経験を組織全体で共有し、活用することで企業の業績向上を目指す経営手法です。

個人が持つノウハウや経験、顧客情報などを企業内で共有することで、業務の効率化やイノベーションが期待できます。

なお、ナレッジマネジメントは新しい概念ではありません。朝礼やミーティングでの情報共有は昔から多くの企業で取り入れられており、これらもナレッジマネジメントに該当します。

1-1. 形式知と暗黙知

ここでいうナレッジには以下の2種類があります。

形式知:明確な数値や文書、データ化された知識
暗黙知:ベテランや優秀な従業員の「カン」や「コツ」、経験から培われたノウハウなど、明確に表すことが難しい知識

感覚的な知識である暗黙知をいかにして形式知化し、共有するのかがポイントになります。

1-2. SECIモデル

ナレッジマネジメントの第一人者である一橋大学の野中郁次郎教授は、SECIモデルという基礎理論を提唱しています。以下の4つのスパイラルによって知識の集積と新しい価値の創出を繰り返し、組織の財産となる知識を築いていきます。

① 共同化 (Socialization)(暗黙知→暗黙知)
個人の暗黙知を、共通体験を通じて互いに共感し合う段階です。ここでは暗黙知は暗黙知として伝えられます。例えば、ベテラン従業員の感覚的な「カン」や「コツ」について、「先輩の背中を見て覚える」、「技術を盗む」という状況です。

② 表出化 (Externalization)(暗黙知→形式知)
共通の暗黙知から、明示的な言葉や図で表現された形式知としてのコンセプトを創造する段階で、暗黙知から形式知へ変換し共有します。例えば「カン」や「コツ」をマニュアルに落とし込んで可視化し、誰でも参照できるようにします。

③ 連結化 (Combination)(形式知→形式知)
既存の形式知と新しい形式知を組み合わせて体系的な形式知を創造する段階です。例えば古いマニュアルを更新したり、システムを追加して効率化したりします。そこでさらに新しいアイディアが出たりもするでしょう。集積された知識を実際に活用し、新たなイノベーションも発生するプロセスです。

④ 内面化 (Internalization)(形式知→暗黙知)
体系的な形式知を実際に体験することによって身に付け、暗黙知として体化する段階です。例えば、③で更新されたマニュアルを実践して①の「カン」や「コツ」を体得し、自分のものにしていきます。その過程で自身の中に新たな暗黙知が生まれ、①の共同化に戻ります。

引用)
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梅本研究室 「知識管理から知識経営へ-ナレッジマネジメントの最新動向-」 2.1 自己超越プロセスとしてのSECI
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/umemoto/ai_km.html

この4つのプロセスは、単なるサイクルではなく、既述のとおりスパイラルです。このスパイラルが個人→グループ→組織へと、互いに影響を与えながら拡がり、企業を強くしていきます。また、④の内面化を繰り返すたびに個人の知識レベルが向上し、ナレッジワーカーの育成にも貢献するでしょう。
ナレッジワーカーとは、専門的な知識や高度な知恵を活かして新しい価値を創り出す労働者のことです。「知識労働者」とも言われ、変化の速い今の社会に求められています。
ナレッジワーカーについては、以下の関連記事をご参照ください。

2. ナレッジマネジメントが注目される理由

既述のとおり、ナレッジマネジメントは新しい概念ではありません。なぜ今、ナレッジマネジメントが注目されているのでしょうか。以下のような理由が考えられます。

① 働き方改革
働き方改革では、残業規制による長時間労働の是正や、フレックスタイム制勤務間インターバル制度による多様で柔軟な勤務ができるような環境整備が推進されています。
企業には、今までより少ない時間と労力で、今までと同等かそれ以上の成果を出し続けることが求められ、生産性向上が避けられない課題となっています。そこで、ナレッジマネジメントにより業務についての知識を共有し、改善方法や新たな手法を発見することで、業務効率化や時間短縮をはかり、生産性を向上させようとしているのです。
生産性向上については、以下の関連記事をご参照ください。

② 人材の流動化や働き方の多様化
従来、日本の企業では、朝礼や全体ミーティング、OJTなどで情報共有がされていました。しかし、終身雇用制度が崩壊しつつあり、必ずしもひとつの企業に定年まで勤め上げるとは限らない状態になり、従業員の入れ替わりが頻繁に起こっています。また、働き方の選択肢が増え、フレックスタイム制の利用やテレワークをする従業員もおり、教える側と習う側が一緒の場にいることが前提のOJTが難しくなっています。先輩の暗黙知が自然と若手に継承される環境でなくなり、従来のナレッジマネジメントが通用しなくなっているのです。そのため、暗黙知を形式知に変換し、蓄積・活用していく必要性が高まりました。

③ IT技術の進歩
以前は、暗黙知を形式知化する方法はそう充実してはいませんでした。しかし現在は、統計学やAIの導入が進み、情報の蓄積や共有がより簡単にできるようになっています。IT技術の進歩も目覚ましく、効果的に情報共有ができるツールも開発され、広まっています(5章参照)。IT技術を利用することで、従来はOJTにより時間をかけて自然に継承されてきた暗黙知を、より短い時間で、効率的に継承することができるようになりました。

変化が激しく先行き不透明な社会の中では、従来のナレッジマネジメントでは不十分になっています。効率的に知識を蓄積・活用し、新たな価値を創造することにより企業の競争力を高めていくことが不可欠です。今後、ナレッジマネジメントはますます重要性を増してくるでしょう。

3. ナレッジマネジメントのメリット

ナレッジマネジメントには、以下のようなメリットがあります。

生産性向上
個人が持つ顧客情報や機械操作のコツ、接客対応などの情報をデータベースやマニュアルに落とし込むことで、誰でもその情報を得ることができ、スムーズに業務をこなせるようになります。例えば、複数の営業担当者が同一の顧客に営業をかけていた、機械操作のコツを知らないために時間がかかりすぎていた、ということがなくなり、業務効率化、時間短縮が可能になり、生産性向上につながります。

② 企業競争力の強化
ナレッジマネジメントの導入により、企業内の誰でも必要な情報にアクセスできるようになります。若手従業員でもベテランのノウハウを取り入れられるため、個人のスキルアップはもちろん、企業全体として能力が底上げされます。また、例えば、営業部員が技術部の情報を参照したり、技術部員が販売事業に関する情報を入手したりできるため、部署間の情報共有・交換が活発になります。複数の部署が関わることで新しいアイディアも生まれやすくなり、企業競争力が高まります。

③ 業務の属人化を防ぐ
「この仕事はこの人に任せておけば間違いない」という業務がある場合は少なくないでしょう。しかし、その従業員がいなくなってしまえば、代わりを探したり育成したりしなければならず、新たな労力と時間がかかってしまいます。現在、転職は当たり前であり、また、テレワークやフレックス制の利用が広まっています。そのため情報の継承がうまくいかないリスクが高くなっており、属人化を防ぐことは重要です。ナレッジマネジメントにより普段から情報共有をしておけば、このリスクを避けることができます。

従来に比べて従業員の入れ替わりが激しく、働き方改革により生産性向上が求められる環境においては、ナレッジマネジメントによるメリットは、より大きくなるのです。

4. ナレッジマネジメントを成功させるポイント

ナレッジマネジメントを成功させるには、以下のようなポイントが考えられます。

① 従業員へ必要性を周知
新しいシステムや考え方を全社に浸透させるには、従業員への周知が重要です。
従業員によっては、自身が努力して習得した知識やノウハウを、誰にも教えたくないと考えることもあり得ます。逆に、自身の知識を取るに足らないものと思い、形式知化することを考えすらしない場合もあります。このようなことを防ぐには、ナレッジマネジメントの目的や重要性、メリットを周知し、従業員が理解・納得したうえで取り組む必要があります。

② 知識の集積だけで終わらせない
ナレッジマネジメントの目的は、知識を集積することではありません。集積した知識を活用して循環させ、知のスパイラルを創り出していくことです(1章1-2参照)。そのため、知識をデータベースやマニュアル化したところで満足せず、積極的に活用できる方法や仕組みを検討することが重要になります。

③ 利用しやすいシステムの構築
知識を集積する際、どのような情報を集積するのかも重要なポイントです。何でもかんでも情報共有していては、本当に必要な情報が埋もれてしまいます。「どのような情報を共有するか」「どのような知識が有益なのか」「収集する情報の優先順位は」というような精査が必要です。また、いくら価値の高いデータベースでも、必要な情報が見つけにくかったり、情報を得るのに時間がかかるとなると、利用するのが面倒になるばかりか、生産性が低下してしまいます。従業員それぞれが、どこにいてもスピーディに必要な情報にアクセスできるシステムが必要です。

どのようなナレッジマネジメントが最適かというのは、企業によって千差万別です。以下でナレッジの管理に利用できるツールを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

5. ナレッジマネジメントのツール

ナレッジマネジメントに利用できるツールと、その利用例をご紹介します。

5-1. ナレッジマネジメントツールの種類

ナレッジマネジメントツールには、以下のようなものがあります。

① グループウェア(代表例:Office365、G Suite)
文書やスケジュールの共有・管理、報告書の決済のほか、メールやチャット、電子掲示板など、さまざまな機能を持つシステムです。部署やチーム単位での情報共有・交流に最適です。

② CRM(代表例:Microsoft Dynamics、Oracle CRM)
CRMは「Customer Relationship Management」の略称で、顧客管理のためのツールです。
顧客の会社情報や取引の実績・傾向をデータ化・分析し、新たなサービスの提案や取引につなげていくことができます。また、異動などで営業担当者が変わっても、今までの取引の記録が残るため、スムーズに引継ぎすることができます。

③ オンラインストレージ(代表例:Googleドライブ、OneDrive)
インターネット上でデータを保存・共有できるシステムです。ファイルや文書ごとのURLを共有すれば、誰でも、どこからでもアクセスすることができます。メールに添付できないサイズの画像や動画も保存可能です。

④ エンタープライズサーチ(代表例:Neuron、QuickSolution)
企業内の情報を検索できるシステムです。Google検索やYahoo!検索の企業内限定版といえます。通常のWeb検索と同様、キーワードで社内の情報を検索することができるため、効率よくスピーディに情報を得ることができます。

⑤ 企業内SNS(代表例:Chatwork、Talknote)
グループウェアと同様、さまざまな機能を持ちますが、よりコミュニケーションの活発化を促す側面が強いツールです。TwitterやLINEのような感覚で気軽にコミュニケーションをとることができるため、新しい情報を速く共有できるというメリットがあります。

必要なツールをうまく組み合わせ、自社に最適なナレッジマネジメントを進めていきましょう。

5-2. 株式会社ライトワークスのLMS:「CAREERSHIP®」の「ナレッジルーム」利用例

当社が提供するLMS(学習管理システム)、「CAREERSHIP®」には、企業内SNSの機能を持つ「ナレッジルーム」というシステムがあります。
特定のテーマのルームを作成して対象者を選定、選ばれた対象者がルームの中でテーマに沿った情報や動画・画像・ファイルなどを共有し、「いいね」を付けたりコメントし合うことができます。
以下にご紹介する「ナレッジルーム」を利用した企業では、離れた店舗同士や本部との情報共有・活用や良好なコミュニケーションの構築に役立てられています。

5-2-1. 大手専門店チェーンQ

隔週程度のペースで新商品を発売している同社では、新商品の知識・接客の仕方を以下のサイクルでインプット・アウトプットさせています。
① 発売2週間前に、各自がeラーニングで当該商品の情報や接客トークを学習
② 発売1週間前に、毎週異なる担当店舗が、当該商品の接客ロールプレイング動画を撮影し、ナレッジルームで共有
③ 担当店舗以外の店舗がその動画を閲覧し、「いいね」やコメントを投稿
④ 発売後は各店舗が接客の成功事例やロールプレイングの動画を投稿、それに対し各店舗が「いいね」やコメントを投稿

5-2-2. 大手アパレルチェーンW

同社では、定期的に本部が店舗におけるディスプレイのテーマやイメージを作成し、各店舗に案内しています。
その際、各店舗が自店のディスプレイを変更し、店舗内の決められた箇所の写真と工夫したポイントを投稿し、ナレッジルームで共有します。それに対して、本部や他店舗が投稿に評価やコメントを実施します。その中で、年間で本部からの評価が高かった店舗は表彰されます。

「CAREERSHIP®」には、上記のような社内SNS機能はもちろん、動画のストリーミング配信、アンケート配信、データ連携、クイックサーベイ、社内SNS、スキル管理といった、企業の教育におけるあらゆるシーンでのニーズに応える機能が搭載されています。
詳しくは、当社ウェブサイトをご参照ください。

株式会社ライトワークス LMS製品 CAREERSHIP®
https://www.lightworks.co.jp/services/careership/merit/lp

6. ナレッジマネジメントの事例

ナレッジマネジメントは、実際、企業ではどのように実践されているのでしょうか。以下に2つの事例をご紹介します。

6-1. 富士ゼロックス

富士ゼロックスでは、製品の設計において、よりユーザーに近い視点を持つ、後の工程の担当者の意見を反映するためには、プロトタイプあるいは製品完成まで待たなければならないという問題を抱えていました。開発の最終段階での設計変更は、開発期間を延長せざるを得なくなってしまいます。
この問題を解決するため、各工程の設計者と技術者が相互交流し、プロトタイプを前にして初めて明らかになることが多い、お互いの現場でのノウハウという暗黙知を獲得するために、互いの現場を訪問し合いました(1章1-2. SECIモデルにおける①共同化)。

その中で、「初期設計の段階から、全員がコメントを出す、改善提案を出す、決定する、それぞれの領域で責任を持つ」という「全員設計」というコンセプトが生まれてきました。しかし依然として、獲得した現場の暗黙知をどのように整理するか、という問題がありました。そこで、オンライン上の設計情報共有システムが開発されたのです。これはZ-EISと名づけられました。そして設計者や技術者たちが、自分たちの体験知や設計ノウハウを言葉にして、Z-EISにインプットし始めました(同②表出化)。

しかし、インプットされた知識は、全員で共有すべきものばかりではありません。そこで各工程の上司が、優れたものだけを特定し、登録するようにしました。Z-EISには、そのような現場の知だけでなく、三次元画像モデル、部品仕様、市場データ、特許情報、製品管理データも含まれています(同③連結化)。

そして登録されたノウハウを実際に効果的・効率的に活用するため、最も有用なものを選別し「品質確立リスト」に編集して、デザイン・レビューに使用しています。設計者は、この新しい体系的な形式知を、現場の状況に適応させながら、再び暗黙知として体得していきます(同④内面化)。

同社が実践するSECIプロセスは、サイクルでなくスパイラルです。そのスパイラルは拡大しながら、再び共同化していきます。大きく豊かになった暗黙知を持った設計者と技術者たちが、そこで相互に作用するのです。

参考)
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梅本研究室 「知識管理から知識経営へ-ナレッジマネジメントの最新動向-」 2.2 富士ゼロックスにおけるSECIモデルの実践
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/umemoto/ai_km.html

6-2. NTT東日本法人営業本部

NTT東日本法人営業本部のナレッジマネジメントは、リアルな場(独創的なオフィス・レイアウト)とバーチャルな場(本部社員およそ1,600名全員の個人ウェブサイトと課、部、本部のウェブサイト)を組み合わせ、どちらも共有できるという点が特徴です。

◆リアルな場
本部オフィスの各階は、次の4つのゾーンによって構成されています。

① ベース・ゾーン

主にプロジェクト・プランニングに使われ、個人の席を固定しない「フリーアドレス」が特徴です。従業員は出社するたびに自分の座席を決め、イントラネット上でその場所を登録します。この仕組みは、プロジェクト・チームのすばやい編成、プロジェクト・メンバー間のスキルの共有、隣の席に偶然座ることによる思いがけない出会いの促進を目的としています。

② クリエィティブ・ゾーン

プロジェクト・チームが、イントラネットからパソコンで引き出した資料をディスプレイで見ながら、対話によって新たなアイデアを創り出すのに使用されます。このスペースは、開放的な雰囲気を持たせるために窓際にあり、移動可能な観葉植物で仕切られ、対話に参加する人数に応じて広さを変えることができます。

③ コンセントレーション・ゾーン
クリエイティブ・ゾーンで得られたアイデアを発展させたり、イントラネットから得られた知識を自分の仕事に実際に使ってみたりする場所です。例えば、システム・エンジニアなどの個人が、プログラミングやシステム・デザイン、提案書作成のために使用します。静かな環境で自分の仕事に集中したい個人のために、パーティションで区切られています。

④ リフレッシュ・ゾーン
喫煙室、ドリンク・コーナー、雑誌コーナーで構成され、1人でリラックスしたり、異なった背景を持った人たちが、インフォーマルに交流し対話たりするのに使用されます。

◆バーチャルな場
約1,600人の本部社員の全員が、個人のウェブサイトを持っています。個人サイトを作った最初の目的は、インターネット技術をマスターするための最低限の体験学習でしたが、今では同じプロジェクト・メンバーのウェブサイトにリンクされ、互いのビジネス・ファイルへ迅速にアクセスできるようになっています。
ウェブサイトの内容は、個人略歴や自身の趣味、家族のことなどプライベートなことから、営業日報や提案書などの日常業務ファイル、得意な業務分野・資格、参加したプロジェクトなど、業務に関することまでさまざまです。
さらに、課や部もそれぞれのウェブサイトを持っています。例えば第三営業部は、営業提案書やプレゼンテーション資料などを登録した「智の森」と呼ばれる知識ベースを構築しています。
優れた営業ノウハウの共有を目的とするこの知識ベースは、以下のように使用されています。
営業マネジャーは、部下が毎日イントラネットを通じて提出してくる折衝記録と添付された提案書を読む
他の営業マンにも共有してもらいたい優れた提案書にコメントを付け、「智の森」に登録する
登録された提案書は、それぞれへのアクセス回数だけでなく、それを使って成果を得た人からの「感謝ボタン」のクリック数もカウントされ、ともに「智の森」のページにランキング表示される
最も人気の高かった上位2つは、半年ごとに「ベスト・ナレッジ賞」として表彰される

参考)
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梅本研究室 「知識管理から知識経営へ-ナレッジマネジメントの最新動向-」 2.4 NTT東日本法人営業本部における場の構築
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/umemoto/ai_km.html

どちらの企業も知識を集積するだけでなく、本当に有益な情報を抽出し、うまく活用できる環境を整え、成果につなげています。

7. まとめ

ナレッジマネジメントとは、個人が持つ知識や経験を組織全体で共有し、活用することで企業の業績向上を目指す経営手法です。

個人が持つノウハウや経験、顧客情報などを企業内で共有することで、業務の効率化やイノベーションが期待できます。

ナレッジには以下の2種類があります。

形式知:明確な数値や文書、データ化された知識
暗黙知:ベテランや優秀な従業員の「カン」や「コツ」、経験から培われたノウハウなど、明確に表すことが難しい知識

感覚的な知識である暗黙知をいかにして形式知化し、共有するのかがポイントになります。

ナレッジマネジメントの第一人者である一橋大学の野中郁次郎教授は、SECIモデルという基礎理論を提唱しています。以下の4つのスパイラルによって知識の集積と新しい価値の創出を繰り返し、組織の財産となる知識を築いていきます。
① 共同化 (Socialization)(暗黙知→暗黙知)
② 表出化 (Externalization)(暗黙知→形式知)
③ 連結化 (Combination)(形式知→形式知)
④ 内面化 (Internalization)(形式知→暗黙知)

今、ナレッジマネジメントが注目されるのには、以下のような理由が考えられます。
① 働き方改革
② 人材の流動化や働き方の多様化
③ IT技術の進歩

ナレッジマネジメントには、以下のようなメリットがあります。
① 生産性向上
② 企業競争力の強化
③ 業務の属人化を防ぐ

ナレッジマネジメントを成功させるには、以下のようなポイントが考えられます。
① 従業員へ必要性を周知
② 知識の集積だけで終わらせない
③ 利用しやすいシステムの構築

ナレッジマネジメントツールには、以下のようなものがあります。
① グループウェア(代表例:Office365、G Suite)
② CRM(代表例:Microsoft Dynamics、Oracle CRM)
③ オンラインストレージ(代表例:Googleドライブ、OneDrive)
④ エンタープライズサーチ(代表例:Neuron、QuickSolution)
⑤ 企業内SNS(代表例:Chatwork、Talknote)

ナレッジマネジメントを取り入れた企業の事例として、2つご紹介しました。
●富士ゼロックス…SECIモデルの実践
●NTT東日本法人営業本部…リアルな場とバーチャルな場の共有

グローバル化やIT技術の革新など、変化が速く激しい時代になっています。この中で自社が成長し続けるために、より効率的・効果的な知識の活用について検討してみてはいかがでしょうか。

参考)
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梅本研究室 「知識管理から知識経営へ-ナレッジマネジメントの最新動向-」
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/umemoto/ai_km.html

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