共働き家庭が増加し、ワークとライフのバランスをいかにとっていくかは、近年ますます重要な課題となっています。

今回は、ワークライフバランスに関する考え方「ワーク・ファミリー・コンフリクト」をご紹介します。
ワーク・ファミリー・コンフリクトは「仕事と家庭の多重役割から生じる葛藤感」と訳され、1970年代以降欧米で発展してきた考え方です。
つまり、仕事と家庭を両立しようとする際、その調和がうまくとれない場合に感じる葛藤感や罪悪感のことです。

コンフリクト2つの側面

ワーク・ファミリー・コンフリクトには2つの側面があります。
すなわち「仕事のせいで」家庭の役割をまっとうできないこと(ワーク・ファミリー・コンフリクト)、そして「家庭のせいで」仕事の役割をまっとうできないこと(ファミリー・ワーク・コンフリクト)です。

ワーク・ファミリー・コンフリクト(WFC)の例

  •  仕事のために、子どもの世話ができない
  •  仕事のことが気になって、子どもにしっかりと向き合うことができない
  •  仕事で疲れてしまい、家事がおろそかになる
  •  仕事のために、夫/妻と話したりゆっくり過ごす時間がない

これらは仕事の都合によって家庭での役割が果たせない罪悪感といえます。

ファミリー・ワーク・コンフリクト(FWC)の例

  •  家庭で父/母としての役割を果たすために、仕事を制限せざるをえない
  •  子育てのために、仕事量をおさえなくてはいけない
  •  家事をすることが、仕事にさしつかえる
  •  夫/妻が希望するので、十分働くことができない

これらは、WFCとは反対で、家庭の事情によって仕事上の役割が果たせない罪悪感といえます。

根強い固定的性別役割分担意識

コンフリクトの方向性には男女で差があるといいます(2008 LivingstonとJudge)。
しかしここで注目したいのは、差があるのは性別ではなく、固定的性別役割分担意識(男性は仕事、女性は家庭という性別役割意識)であるということ。
男女雇用機会均等法が施行されて久しいですが、日本では依然として「男は仕事、女は家庭」という根強い固定的性別役割分担意識が残っています。

たとえば、男性役割意識が強い人の場合は、“休日出勤や家に仕事を持ち込むなど、仕事の都合で家庭の役割が果たせなくてもそれほど罪悪感を感じない”のですが、逆に“子どもの都合やイベントで仕事を休む場合には、ひどく罪悪感を感じる”のです。
また、女性役割意識が強い人の場合は、“家事と育児に支障のない範囲で仕事をする”などとなり、非正規雇用者の約7割を女性が占めている(総務省統計局「平成29年労働力調査年報」)こともその表れと見ることができます。
こうした実態からも、仕事と家庭の完全なる男女平等は実現していないのが現状です。

自律神経の乱れ、メンタル不調のリスクも

コンフリクトが過度となった場合、心身に影響を及ぼします。

  •  仕事に注力しすぎるがゆえ、家庭での信頼喪失、居場所喪失
  •  定年退職後の喪失感
  •  子どもの受験失敗から自分の存在意義を失い、メンタル不調に
  •  子どもとの関係により不眠、イライラ、心身の不調
  •  仕事と家庭の抱え込みによる、心身の疲労

自分が納得できているか

私たちはスーパーマンではありません。
特に勤勉な人は、無意識下で、「○○であるべき」、「○○しなければならない」との思い込みから高い理想を掲げ、勝手にコンフリクトを強めてしまう傾向にあります。

コンフリクトを減らすためには、「自分が納得できていること」が大切です。
そのためには、以下のような取り組みが有効でしょう。

  •  自分の優先順位(譲れないもの)を整理する
  •  自分のなりたい像を描く
  •  なりたい像を身近な人(職場、家庭)とシェアする
  •  似たような立場の同士、味方、理解者を見つける
  •  優先順位を現状に当てはめていく

また、目標を持つことは大事ですが、「こうありたい」と目指す姿が、いつしか「こうでない自分は認められない」というしがみつきに逆転または混同してしまうと、自分を追い詰めることになり、コンフリクトが過度となります。

自発的SOSと傾聴

仕事も家庭も本来チームで行うものですので、自分一人だけが頑張ったり悩んだりする必要はありません。
困ったら自発的にSOSを出す、困っている人がいたらまずは傾聴(耳と心を傾ける)するという当たり前のことを当たり前にできる環境・関係が望まれます。
また、仕事も家庭もずっと状況が一定ということはなく、時とともに状況は変わっていくものです。
今が「しんどい」時期でも、1年後にまったく同じ状況ということはないでしょう。
長期的に、また俯瞰して、ゆっくりやっていくという心構えでいるのもおすすめです。