優秀な人材流出を防止する「リテンションマネジメント」の重要性

リーマンショック以降、乱高下はありつつもようやく世界経済も安定しつつあります。しかし米国のトランプ政権の保守的な施策や種々の外交問題、戦乱などでいまだ混沌とした局面を脱したとは言えません。

国際問題に代表されるように、ここ数十年のドラスティックな社会環境の変化は大きく、経済はもちろん、雇用の流動化はとどまるところを知りません。今はよりグローバルかつフラットな時代を迎えています。今までのような人と企業の関係性は大きく変化し、フレキシブルに自分に適した仕事や環境、条件を求めて仕事をする、転職をする、という選択肢が一般的になりつつあります

人材の流動化が進むということは、企業側から見ると『優秀な人材が流失するリスクが高まる』ことを意味します。企業は、自社にとって必要な人材の流失を食い止めるために、給与や福利厚生などの待遇面の充実や、企業自体の魅力を高めるなど、働く幸福感を高めていく必要があります。

優秀な人材流出を防止するには、企業自体の魅力を高めて、人材流出を引き留める施策「リテンション施策」に、多くの企業の注目が集まっています。さらに一歩進み、マネジメント的観点にたった「リテンションマネジメント」について、今回は、その概要から重要視される背景、活用のポイントなどについてご紹介します。

「リテンションマネジメント」の概要や意義について

リテンションマネジメントの意味や定義とは

「リテンション」とは、自社の人材や顧客との関係を「維持・保持」するという意味で、HRの分野においては「人材確保」を意味する、人材マネジメント用語です。幹部候補や将来を有望視されている若手社員など、自社にとって必要な人材の確保や、そういった人材の社外流出を防ぐための人事・経営戦略としても重視されています。

「リテンション」に、HR関連キーワードの一つである「マネジメント」を組み合わせた言葉が「リテンションマネジメント」です。

「リテンションマネジメント」は、欧米では以前よりHRの一分野として確立されています。「企業と従業員との間に良い関係性を構築し、維持させていくこと」つまり、優秀な人材が長期間、その高い能力を発揮し続けていくことができるように就業環境を整備する」ための具体的な施策の意味で、注目されています。

リテンションマネジメントの目的について

一昔前のように年功序列で誰もがほぼ“横並び”の待遇を受けることができる時代であれば話は別ですが、現在のようなスピーディーで変化の多い社会環境においては、企業自身が成長を続けていくために、獲得した人材、特に優秀な人物には、継続的に活躍してもらうことが、費用対かつ効果的側面、さまざまなコストの観点からみても不可欠です。多くの労力と時間をかけて採用した人材に定着してもらい、流出などのリスクを防ぐか。人材の活用と離職のリスクヘッジの両輪をきちんと回すのがリテンションマネジメントの要です。

最大の理由は、人材の離職が企業へ与える損害が非常に大きいということが挙げられます。「損害」とは、「財務的な損失」と「他の社員への心理的な悪影響」の2つの側面で表現されます。

「財務的な損失」ですが、ある米国企業の調査では、1人の従業員の離職で企業が受ける損失は、離職者の年収の93%~200%にのぼると言われています。10人の専門職または管理職が退職した場合、約100万ドル(2018年5月20時点/約1.09億円)にものぼる損失が計上されるという算出もあります。

社員が退職することで発生するさまざまなマイナス要因は「担当者(役職者)空位による機会損失」「知識・スキル、ノウハウの喪失」「人手不足による残業代の増加」「新たな人材の採用・育成などによる費用の発生」などがありますが、そのインパクトは専門性や役職が上がるにつれて大きくなります。

「残っている社員たちへの心理的な悪影響」によるリスクでは、人材が離職する=自社には何か問題があるのではないか、というマイナスの思考ループに陥ることがままあります。職場環境全体のエンゲージメントやモチベーションの低下につながる恐れがあります。

物理的な負担が増加する点も問題でしょう。新しい人材を採用するまでの間も、部署や組織全体の仕事量は変わりません。一人もしくは数人分の仕事量を全員で負担する状態が続けば、社員たちは疲弊し、仕事や組織自体への不満も増加するでしょう。不満がキャパシティーを超えた場合、「離職する」という選択肢を選ぶ社員も少なくありません。社員、特に優秀な社員の離職は、他の人材にもマイナスの影響を引き起こします。

逆に、成長著しい企業の多くは「リテンションマネジメント」を大切にしています。誰もが長期間働きたいと思う企業になることが、優秀な人材の採用につながるということを認識しているからです。活躍する人材が多いことは、業績の向上が見込めるのはもちろん、社員への投資も増やすことができ、結果、働きやすい環境をきちんと作ることができるのです。

多くの人が考える離職理由とは?

いくつかわかりやすい理由がありますが、まず「待遇・給与」以外の面でいうと、「社内コミュニケーションの活性化」を求める声が多いことが挙げられます。

単純にコミュニケーションをとる機会を増やすということだけではなく、業績や今後の企業の見通しなど、会社の状況やビジョンを社員全員に伝えていくことや、上司と部下との関係性など、その時々で必要なミュニケーションを実施する、ということを指します。

働く環境作りも重要です。「残業時間が多すぎる」「有休を自由に活用できない」という待遇面の問題は離職理由の大きなものの一つです。「働く環境」に関する問題を解決するためには、社内で困っていることを相談できるメンターを設置するなど、直属のマネジャー以外に“頼れる存在”を作っておくことも挙げられます。

社員一人ひとりをきちんと評価できているかをチェックすることも忘れてはいけません。評価への不公平感は、モチベーションを大きく低下させる要因の一つです。客観的かつ公平に評価できているか、より最適な評価体系にブラッシュアップできているかなどを、継続的に確認することは不可欠です。

優秀な人材の離職理由についても考えてみる

より自分自身のスキルアップ、処遇の妥当性を求める声は多くあります。自分自身の力が正当に評価されない(給与や処遇を含め)ということは、特に優秀な人材にとってはマイナスの要素になります。

同じ会社に留まり続けなる以上、自分がいかに高みを目指せるのか、というのは気になるところです。短期的観点だけでなく、長期的かつ客観的、俯瞰的な視点でどのくらい個人のモチベーションに訴えかけることができるかが、重要なポイントです。

優秀な人材ほどスキルを持ち合わせているため、容易に転職が可能です。スキルアップを目的とした離職を防ぐためには、自社内でスキルアップできる環境づくりが大切です。

人材競争が厳しい時代の「リテンションマネジメント」

リテンションマネジメントは人材流出を防ぐことが目的とされていますが、一般的な人材の流出を防ぐのであれば不満を解消する、優秀な人材を防ぐのであれば、モチベーションなどの動機付けとなるプラスαの問題を解決することが大切です。

そのために社内コミュニケーションの活性化や社員のエンゲージメントを向上させるといった施策の実施はもちろん、社員一人ひとりが社風や経営理念に賛同できるかといった視点も、リテンションマネジメントに影響を与えることを念頭に置いておく必要があります。

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