人材の流失を防ぐ=「リテンション」がマネジメントで重要なわけ

重要な経営資源のひとつである人材の社外流出は、企業にとって、重要な経営課題です。終身雇用の崩壊や少子高齢化による人手不足など社会情勢が変化する中において、人材の流出を防止する『リテンション施策」が多くの企業で注目されています。

「enジャパン」が実施した調査では「リテンションについて何か対応をしているか」という質問で「対応している」と回答した企業は全体のわずか35%でした。一方で、「今後取り組みたい」と回答した企業は67%と、これからの実施を検討している企業は70%近くに上っています。多くの企業で、リテンションを高めたいという希望はあるものの、具体的な取り組み方が分からず、施策のためのリソースが割けていない現状があるのが見てとれます。

リテンション対応をしている企業
今後のリテンションの対応について
出典元『エン・ジャパン』リテンションに効果的な施策は、社内コミュニケーションの活性化と待遇改善。

今回は「リテンション施策」をいかに有効に活用するか、具体的な方法やポイントについて説明します。

「リテンション」施策についての考え方とは

リテンション施策についての考え方(着眼点)と、効果的なリテンション施策例について説明します。

リテンション施策の着眼点とは

リテンションは大きく分けて「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2つにわけられます。

「金銭的報酬」とは、個人に応じた給与やインセンティブ、ストックオプションなど、金銭的な価値を提供するものです。成果主義が導入されて以降、人事査定は能力給や成果給、コンピテンシー評価などが主流となり、成果を上げる社員は自分の成果に応じた報酬を、より明確に受け取ることができるようになりました。

反面、就業環境にゆとりが少なくなり、報酬をアップしても人材流出に歯止めをかけることが難しい企業も出てきています。単純な成果主義と高報酬だけでは、リテンションとして効果的ではないということが読み解けます。

この問題を解決するのが「非金銭的報酬」です。 お金を稼ぐために仕事を行うのは当然ですが、一定の給与水準を満たした場合、就業環境の充実やワークライフバランスの実現、スキルやキャリア向上のサポートといった「金銭以外の価値」を求める傾向があります。

会員数70万人以上、20代向けの転職サイトである「Re就活」の会員を対象とした調査では、職歴ありの転職理由として「人間関係・社風が合わない」「ワークライフバランスが悪い」などが上位として挙げられています。「給料が低い」は4位となり、「金銭的報酬」よりも「非金銭的報酬」の方が、重要性が高いことがわかります。

職歴ありの転職理由
出典元『学情』Re就活登録会員対象「就職・転職活動に関するアンケート」調査レポート 2018年3月版

非金銭的報酬の方が重要性が高いとはいえ、約3割の人材が金銭的報酬によって流出を防げた可能性があります。非金銭的報酬・金銭的報酬のどちらかだけを施策にするのではなく、バランスよく組み合わせることが重要です。

効果的なリテンション施策とは

「enジャパン」の調査で、「リテンション施策で効果的だった」調査結果もあります。上位は、「社内コミュニケーションの活性化」(実施している:80%、効果的:59%)、「待遇改善」(同:76%、同:58%)という2項目でした。この2つの項目も含め、リテンションには効果的な施策がいくつかあります。

実施している施策、効果的だった施策
出典元『エン・ジャパン』リテンションに効果的な施策は、社内コミュニケーションの活性化と待遇改善。

1.スキル・キャリア向上の支援

社員のキャリアパスに関わる相談窓口の設置や専門的なスキル向上のサポート体制、さらに社員の自発性を高める「社内公募制度」や「社内FA制度」など、社員の人材育成を推進することは、リテンション施策として有効です。

営業などの直接部門と異なり、成績が具体的な数値として表しにくい間接部門に従事する社員には、営業部門とは異なる評価システム(EX:サンクスカード)を導入することで、全社員のリテンションを高める効果が見込めます。

役職や職種などに応じた研修やセミナーなどを実施し、働く一人一人が自分のスキル・やキャリアが向上しているということを実感できるようなイベントを準備することも有効です。

2.業務内容と個人の役割に応じた「給与体系」の明確化

働く環境の整備や人事制度の見直しなどで、モチベーションを高めることはもちろんですが、やはり目に見えてインパクトがある「報酬」もキーポイントであることは間違いありません。同業種、職種別の一般的な給与水準の現状を把握し、自社の現状と照合し、適正な報酬になっているかを検証することが重要になります。

「個人のパフォーマンス」をどのように定義づけ、それを報酬として反映していくかは各社それぞれの考え方によります。その中で、社員がいかに、長期間モチベーションを継続できているか、というのはわかりやすい観点の一つです。

企業の成長に貢献したいという個人の価値観に見合う形で、適正に活用できているかチェックしておくことが必要です。

3.個人希望の異動やスキル開発の推奨

リテンションを高めるためには、個人が、長期的なスキルや知識を獲得できるような機会を準備しておくことも必要です。昇給・昇格だけではなく、個人の適性と希望にあわせて、他部門への定期的な異動や人材交流など新たなチャレンジのステージをいかに準備できるか、ということです。

明確なキャリアパスを組織として構築して社員に明示することで「やった分だけ評価される」という安心感と目的達成意識を醸成し、将来的なキャリアプランをイメージさせることに繋がります。

4.継続的なコミュニケーションを促す環境作り

定着率を高めるためのポイントである「従業員エンゲージメントの向上」は、社員同士で自由に意見交換や議論ができる企業風土の醸成が欠かせません。

風通しのよい組織には連帯感が生まれると同時に相互理解の促進にもつながります。マネジャークラスであれば、部下への的確な指導やフィードバックの実施といった継続的なコミュニケーションを推進することも、リテンション施策の代表的な手法です。

5.ワークライフバランスの実現

ここ数年、違法な残業など長時間労働の常態化が社会問題になっています。

長時間労働などの問題を解決すべく、政府主導で推進されている「働き方改革」では、新たな勤務体制や雇用形態を促進する方針が盛り込まれつつあります。こういった国の動きも注視しつつ、企業としては、個人のライフスタイルに合わせた、時短やフレックス制度、リモートワーク、育児休暇制度の拡充といったワークライフバランスの実現を推進する必要があります。

リテンション施策の「非金銭的報酬」に該当するところで、社員の満足度を向上させる効果が期待できます。

6.経営者(経営陣)との対話

経営陣と現場の社員の直接的なコミュニケーションは、組織の風通しをよくするとともに、組織の団結力と組織への帰属意識の向上を実現させます。

経営者が社員の日々の成果をきちんと把握してフィードバックすることは、社員に「自分たちも企業の一パートナーである」ということを認識させることにもつながります。

本当の離職理由は何かー組織を客観的に分析するところから始める

リテンション施策の重要な点は「自社に何が足りていないのか、なぜ離職に結びついてしまうのかを考える」ことです。とはいえ、実際に離職する人材の理由は建前であることも往々にしてあります。

本当の離職理由は何だったのか。リテンションを高めるためには自社の人材活用や現場の様子を客観的に分析し、離職につながりそうな不満要素をピックアップするようにしましょう。まずは、現状把握が何よりも重要なリテンション施策なのです。

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