平成30年3月卒業予定の大学生の就職内定率は10月1日時点で前年同期比4.0ポイント増の75.2%であり、直近10年間では最高の売手市場となっている(※1)。一方、内定辞退率も64.6%(※2)と高く、東証一部上場企業においても人材獲得不足により、第二次募集、第三次募集を実施する例があったようだ。また、ある企業では新卒採用者に自社を第一志望とする者が一人もいなかったという話もある。 各企業の人事担当役員からは、「想定以上に内定辞退者が出た」、「自社の採用方法・体制に限界を感じる」、「内定者全体のレベルダウンが気になる」といった声をよく聞く。また、優秀な学生ほど少数エントリーで複数の内定を獲得し、納得するまで就職活動を続ける傾向があるようだ。 人材を獲得したい企業としては、「初任給を上げる」という選択肢もあるが、今後迫りくる同一労働同一賃金や定年延長等への対応も視野に入れる必要があり、単純に新卒のみの報酬水準を上げるような部分的な対応で凌ぐということは適切とは言えない。各社においては、より根本的な採用のあり方を再考することが求められるだろう。今回は採用力強化のためのポイントとして、以下に3点を挙げる。 ①採用方針の見直し 「優秀=高学歴」として一律に高学歴者を採用する方針としていないだろうか。これまで全員を同じ基準で審査・採用をしているのであれば、今一度採用方針を見直す必要があるだろう。「自社に相応しい人材」はどのような人か、適正数はどのくらいかを検討し、求める役割に応じて審査・採用を実行していくことで、企業・学生との間のギャップを軽減し、採用の歩留まりが向上すると考えられる。弊社では、採用をマーケティングの発想で捉え、採用ポートフォリオマップの作成により、採用予定者の質と量を設定し、期待役割に応じた学生の入社確度の最大化を支援している(弊社では、「ポートフォリオ・リクルーティング」と呼ぶ)。さらに、面接ステップごとの明確な判断基準や効果的なKPI・目標値の設定、カギとなる有効質問リストの準備等を行うことで、より採用力が強化される。 ②コミュニケーションツールとしての情報開示 学生は貴社の様々な情報に関心を持っている。たとえば、キャリアプランや研修・留学制度、先輩社員の働き方やワークライフバランスの状況といったことから、残業時間や入社3年目までの離職率、有給休暇取得率、SNS上のネガティブ情報までと範囲が広い。最近では、男女比率よりも女性管理職比率や育児をする女性社員比率、男女平等に対する施策よりもLGBTに対応した制度の充実性等への関心も高まっており、これに合わせて開示する企業も増えてきている。また、公的認証(例:なでしこ銘柄、健康経営銘柄、くるみんマーク等)に対する注目度も高まっている。ある企業では、公的認証の取得により、学生の応募数が倍増したという。企業は学生から選ばれる立場にあることを意識して、企業としてのメッセージの発信や細やかな情報開示をしていくべきだろう。 ③採用スタッフ(採用担当者+リクルーター)の教育 学生にとって、その企業の顔である採用スタッフの教育も重視したい。単発的に任命されたリクルーターが、簡単な説明を受けた後すぐに採用活動を開始していたり、採用担当者自体が少なく、全員が手一杯の状態でどうにか回していたりするという話を聞く。採用力強化のためには、企業理念および採用方針が採用スタッフにしっかりと浸透していることが不可欠であり、さらに各人のスキルとして優れた傾聴力や質問力が求められる。自社をPRするだけでなく、学生が興味のあるテーマ・内容や、本当に知りたいと思っていることを聞き出すことが必要である。これにより、採用スタッフは双方向のコミュニケーションで学生の本音を引き出し、企業の方針に沿った適正な人材を見極めることができるのではないか。他社と差別化し、学生に自社を志望してもらう上で採用スタッフの意識改革やスキルを向上させる訓練は重要である。 これから各社の採用活動が本格化していく時期である。“オリジナルの採用ポートフォリオマップ”を活用し、“自社らしさ”を体現した採用スタッフによる双方向のコミュニケーションを通じて、真に必要な人材を見極めていってほしい。 (※1)厚生労働省「平成29年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(10月1日現在)」より (※2)株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所「『2017年10月1日時点 内定状況』就職プロセス調査(2018年卒)」より