多くの企業が人手不足で悩んでいる。また、採用活動を行っても、求める人材は他社に採られてしまうということも多い。どうすれば求める人材を採用できるのであろうか?転職者はどのような理由で就職先を選ぶのだろうか? 転職者が現在の勤め先を選んだ理由は、厚生労働省の調査「平成27年転職者実態調査の概況」で示されている。上位3項目に挙げられたのが、「仕事の内容・職種に満足がいくから」、「自分の技能・能力が活かせるから」、「労働条件(賃金以外)がよいから」という理由である。売手が強いといわれる現在の転職市場において転職者は、前述の3つは最低条件だというのが本音であろう。 この統計結果から、小売業を営む会社から伺ったお話が思い出される。「IT領域で新規事業を立ち上げるために採用活動を始めたが、人が集まらなかった。IT業界には特有の人事制度があり、弊社の人事制度のもとでは働きにくいらしい。」というもの。換言すれば、専門性を必要とする職種への求職者が求める条件と、会社が持つ制度がマッチしていなかったのである。同社では、社内で新規事業に必要な人材を育てたため、新規事業を軌道に乗せるまで時間がかかってしまったという。短期間での新規事業の収益化を目指し外部から人材を獲得することにこだわるのであれば、人事制度を見直すことが必要であっただろう。事業の性質に合わせ、ひとつの会社の中に複数の人事制度を設計するのである。 しかし、同じ会社で働いているにも関わらず、給与水準や評価基準といった人事制度が異なることに対して、従業員が不公平感を持つ可能性がある。この不公平感を解消する策のひとつが分社化である。事業ごとに会社を分けておくことで、人事制度の自由度が高まると考えることもできる。 持株会社体制に移行した後、各事業の性質や各事業会社の経営課題に対応するために、新たな人事制度や働き方を取り入れた会社もある。2003年に持株会社体制へ移行したJFEホールディングスの場合、事業子会社のひとつであるJFEエンジニアリングが環境の変化を踏まえ、2008年4月に新人事制度を導入すると発表した。また、JFEグループCSR報告書2017では、働き方改革に関して事業子会社ごとに異なる施策を行っていることがわかる。 持株会社のメリットというと、グループ最適視点での戦略立案・意思決定、新規事業への進出、事業買収や売却等M&Aの推進、責任単位の明確化、意思決定の迅速化などが挙げられることが多い。これらに加えて、企業が必要としている多様な人材に対して様々な働き方や制度をつくることができることも持株会社化のメリットである。外部人材の獲得で悩まれていて、各事業の特性に合った人事制度や労働条件の整備が課題と認識された場合は、持株会社体制への移行を検討してはいかがだろうか。 (※1)厚生労働省(平成28年9月20日)「平成27年転職者実態調査の概況」